高血圧 高血圧

日本人の高血圧は推定4000万人です。
一昔までは、血圧が十分下がっていなくても満足していた医師や患者が多かったように思います。しかし、血圧管理が不十分であれば合併症の発現率が上がることが周知されるにつれて、医師も患者も厳格に血圧を下げるために必要な治療に向き合うようになりました。
必要な治療をしない理由は「高血圧を治療する理由は?」「治療して得られるものは何か?」を知らないからかもしれません。現在の高血圧治療は、多くの方が目標血圧までさげることが可能になりました。治療すれば適切な血圧までコントロールできるのに、放置するのもったいないことです。
治療目的
血圧が一過性に上昇することは、ほとんどの場合問題ありません。問題なのは、慢性的に高い状態を“放置”することです。放置した結果として血管が硬くなり、脳卒中や心筋梗塞のような突然おきる病気のリスクが格段に上がります。
治療の最大の目標は、適切な圧を維持することで動脈硬化を減らし脳卒中や心筋梗塞を減らす事です。
高血圧と 脳卒中・冠動脈疾患
食事
治療法を考えるうえで、第一は運動・食事の生活習慣を正しい知識を得て実践する事が重要です。
特に、糖尿病・慢性腎不全・心筋梗塞後は厳格に血圧管理をした方が良いです。食事で、塩分制限が非常に重要です。「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」の報告で日本人男性は平均11gの塩分を摂取しています。高血圧患者の目標塩分摂取量は6g以下が理想です。塩分を適切に管理すれば、ほとんどの方の血圧は改善します。
また、肥満であった場合には、体重を適切に管理する事で血圧は改善します。適正なカロリーを知りましょう。
「塩分制限をすると、初めは味が薄くて食べた気がしない」とよく聞きます。しかし、慣れてくると、「素材をしっかり味わえるようになった」とポジティブな意見に変わってきます。食事の楽しみが減ることはないのです。
楽しく塩分制限をしていきましょう。
具体的な方法は、薄味に慣れる事です。はじめは薄く感じても味覚が慣れてくると、薄味でも十分味がわかるようになります。
①醤油を極力減らしましょう。 醤油をかけないと気が済まない方がおられますが、かけすぎは禁物です。最近は一回量を少なくするスプレータイプもあり、量を減らす事ができます。
また、『こいくち醤油』でなく『うすくち醤油』にしたらよいのでは?と質問を受けます。しかし実は、『こいくち』も、『うすくち』も共に非常に塩分が多いです。減塩に勧めるのは減塩醤油です。旨味成分は同等で食塩含有量を少なめにした醤油です。
②だしや香辛料を使う、特に天然のだし、カツオ節やコンブなどがおすすめです。一般的に市販のだしの素は塩分が多く含まれています。だし汁を使わずともきのこ類やトマトやその他の野菜を煮込めば、食材からたっぷりだしがでます。みりんで多少甘みをつけておけば少ない塩分で味が際立ちますし、スパイスやハーブも味のアクセントになり塩分を減らせます。香辛料やレモンなどの柑橘類も有効です。
運動
有酸素運動が勧められます。ウォーキングや軽いジョギングなどです。有酸素運動を継続して行う事で、長期的にみると血圧が下がります。
“にこにこペース”が基本です。しゃべりながら、笑顔がでる程度のゆとりをもてる程度の負荷に留める位を勧めます。
時々、“体を鍛え直す”と、激しい筋肉トレーニングをされる方がおられますがお勧めしません。激しいトレーニング後に血圧を測定すると、発汗や血管がひらく事で血圧が下がる事もありますが、運動中、非常に血圧があがっている事もすくなくありません。運動に関しては主治医とよく話し合ってください。
ストレスを避ける
ストレスは高血圧をさらに増悪します。心身ともにリラックスする事が一つの治療にもなります。趣味や軽い運動、十分な睡眠など自分がリラックスする方法をみつけることは長期的な高血圧治療になります。
寒さ対策をする
寒さは血圧を上げます。冬は血圧が高く、心血管病による死亡率も高いです。高血圧の人は、寒さを避けるために注意を払うべきと考えます。浴室や脱衣所も十分に暖かくして、部屋ごとの温度差を少なくしましょう。冷水浴が良くないのは勿論ですが、血圧変動をさけるため、入浴では熱い湯を避けて長湯をしないことが重要です。サウナも避けた方が無難です。

2次性高血圧症

原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症の3/4が血清K値正常との報告もあり、低K血症がなく とも除外できないとされる。(J Endocrinol Invest1995;18:495-511)
原発性アルドステロン症の検査
正常域血圧を3つに分ける
高血圧学会では、正常域血圧をさらに正常・正常高値血圧・高値血圧の3グループに分けています。大枠となる血圧の正常を知ることは重要です。

例えば136/88は高血圧ではありません。ですが、正常でもありません。糖尿病でいえば糖尿病予備軍といえばわかりやすいかもしれません。このグループでは、定期的な血圧測定を勧めます。また、高血圧治療に準じた食事や運動療法を指導します。
Q and A
Q4 50歳男性 治療歴2年 “今日の血圧110/70と低めです。薬は止めた方が良いですか?”
A4 薬は今日も内服してください。高血圧治療によって血圧が下がってきたことは喜ばしいことです。今まで血圧が160/100前後で経過してきた人にとって、血圧が110/70とまで下がると低いと感じる方は多いようです。このような相談は珍しくありません。高齢者を除けば、収縮期血圧が110mmHgは至適血圧=最も望ましい血圧です。普段の血圧がこの位でコントロールできると、将来合併症のリスクを大きく減らすことができます。
*高齢者は、収縮期血圧が正常血圧でも、拡張期が低くなりすぎたり他の理由で血圧の基準を個々で設定し直すことがあります。